2014年12月13日
除隊4
写真はCBC (CERTFICAT DE BONNE CONDUITE)と呼ばれる証明書で、これは除隊する最後の最後、外人部隊の霊安室で渡される除隊の証明書である。除隊の証明書と言うよりも、「任期中きちんと働きました、この証明書を持つ者は間違いのない人物です」と言う人物保証の証明書のようなものである。
もちろん、脱走すればもらえるはずもなく、脱走者はそもそもCBCの存在すら知らないであろう。
例え実質5年近くいようとも脱走しこのCBCを持っていない限りは話にならないのである。
しかしこのCBC、きちんと任期を全うしたとしてももらえるわけではない。任期中何度も不祥事を起こし、何度も懲罰を受けた者、勤務評定が極端に悪い者などは例え任期最後まで在隊してももらえないのである。
このCBC、実はと言うかいろんなところに関わってくる。外人部隊を除隊したあとに、このCBCを持っていないような人物はフランスの滞在許可証労働許可証を県庁、市役所で発行してくれないのである。
又、どこか大手企業や、フランスの国家公務員になろうとする場合はこのCBCの提出を求められるときもある。中小企業は求めることはまずない。
前回はオバーニュに出頭するところまで書いた。今回は出頭してからのことを書く。
オバーニュでの除隊手続きは月曜から金曜までの5日間である。5日間と言っても金曜日には実質終わってるので、金曜の午後はもう娑婆に出てる場合もある。 除隊手続きは単純に任期満了の場合と、15年以上勤続し恩給をもらえる資格を持って除隊する場合の2通りがある。もちろんこの2種類の除隊者は同時に除隊手続きを進めるけれども除隊の書類がかなり違う。
ここでは任期終了の場合を見ると、単純に任期終了し、フランスの国籍を持っていない者は担当者と一緒にマルセイユにある県庁へ行き滞在許可証労働許可証の申請を行う。もちろんこの時点ではCBCをもらえるかどうか、はっきりしていないから結構どきどきものである。
実際、私は2人のブラジル人が土壇場でもらえずにパニックになっていたのを見た。
単純に任期修了者は、特に書類上の手続きもなく、ましてや5年の一任期で除隊するものは至極簡単に済む。8年以上在隊し、正式除隊するものは職業訓練課程を受けることができる資格があるのでこれは又別途だ。
5年任期を全うし、娑婆に出る者は意外と簡単に娑婆に出してくれるけども、オバーニュで渡される各種書類は死ぬまで大事に保管しなければならない。それは各種年金や、保険その他で大事になってくるからである。
娑婆に出たら、自分が居住する街の市役所へ行き、マルセイユの県庁で発行してもらった労働許可証滞在許可証の発行に関する書類を提出する。そして同時にアテスタシオンと呼ばれる仮の滞在許可証労働許可証をその場で発行してもらえる。それからしばらく待てば正式なものを発行してくれると言うことになる。
フランスは移民大国と言われるけど、この労働許可証滞在許可証を発行してもらうのは実は物凄く難しい。日本人で何の伝もなく、フランスで働きたいと言ってもまず出してくれるはずもない。日系の大手企業でも駐在員をフランスにおきたい場合でも弁護士に多額の費用を払ってやっと何とかその駐在員の労働許可証滞在許可証を発行してもらえるので.外人部隊上がりはその点非常に有利である。しかも外人部隊上がりが発行してもらうのはいきなり10年物の労働許可滞在許可であるから、他の普通の日本人からすればありえないような夢のような話ではある。
それから、仕事が決まってなければ、POLE EMPLOIと言う、失業者センターへ行き、失業の手続きをすると、翌月から失業手当が基本給の8割ほどは黙っていても2年間入ってくるのである。
これが一般的な除隊である。脱走された方には全く無縁な話であろう。
余談だが、正式に除隊すると外人部隊は実は追跡調査なるものを行う。これは外人部隊出身者が変なことをしでかさないようにである。
だから脱走者がろくに拳銃を射撃したことがないけど銃アクション指導をするというような詐欺行為をやっても外人部隊は関知はしない。しかし当然知ってはいる。外人部隊としてはそういう詐欺師は外人部隊とは全く無関係であると言うだけである。
最低でも5年きちんと在隊した者には他にも特典はある。
これはオバーニュの少佐に聞いた話だけれども
ある男が外人部隊を5年間きちんと勤め上げ、娑婆に出たけれども、最終的に浮浪者となって、ある冬の晩にパリで行き倒れたらしい。警察が彼を保護したあとに外人部隊の警務隊が突然やってきてその浮浪者を警察から引き取り外人部隊の老人ホームに入れ、死ぬまで面倒を見た、
外人部隊には老人ホームがあり、これは世界のどこの軍隊でも他に例はないようなシステムである。5年間きちんと勤め上げ、娑婆に出てうまく行かなくても最後は又外人部隊が面倒見てくれるのである。
もちろん脱走者はこの限りではない、のたれ死んでも関係はないのである。
Posted by legion84
at 15:24
│生活